110人が本棚に入れています
本棚に追加
ただでさえ彼はこっちの人間じゃないただのノンケだろうし、気まぐれで俺に興味を持っただけなら直ぐに飽きるのだって目に見えてるのに…
俺は彼に何を期待してる?
「俺が役に立てるなら、また来週も来るから」
「いや、何言ってんの?そこまでさせられるわけないだろ?」
「ううん、俺も話したいし…」
こんな風に他人の優しさに触れたのって、いつ位ぶりだろうか。
溢れそうになる涙を必死に堪え、そっと触れられてる手を握り返し、それからベットに座り時間が来るまで色んな話をした。
今まで何人相手したとか、バイトでの辛かった事とか、彼は嫌な顔一つせず、ずっと笑顔で聞いてくれた。
そしてあっという間に時間は過ぎていって、俺たちはいつの間にか普通の友達のように話し、名前で呼び合うようになっていた。
「そろそろ時間だわ。ありがとう…心」
「名前で呼ばれるの、凄く嬉しいっ」
「なんだよそれ」
「また来週も来るから」
「いいよ、無理すんなって…」
「俺が将吾くんの事守れるならなんだってする!」
「だからさ、そういう事サラッと言うのやめて?」
後輩に守ってもらうなんてかっこ悪いし、これ以上優しくされて勘違いしたくもない。
心は俺に優しいけど、きっとそういうんじゃない。
求めて拒まれたら悲しくなるだけだろ?
「もぉ、わかんない?好きじゃなかったらこんな事しない…」
「えっ?ん…っ!?」
それは本当に一瞬だった…
気付いたら俺の目の前に心の顔があり、唇が触れていた。
何が起きてるのかどうしたらいいか分からなくて、俺は呆気に取られ身動きが取れなくて、さっきまで拒まれたら悲しいからと思ってたのに、まさか心の方からくるなんて…
「次はちゃんと教えてね♡」
心はそう言い残し、何食わぬ顔で部屋を出て行った。
好きって、あの好きって事なのか…?
俺は今後、心とどう向き合っていけばいいんだ?
ちゃんと教えてって…どういうことだよ…っ!
ドクドクと脈打つ胸をグッとつかみながら、ジワジワと溢れだしそうになる感情を必死に抑えた。
最初のコメントを投稿しよう!