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なんでお前が!?
クッキーを携えて家に帰ると、乱雑に脱ぎ捨ててある靴が余分に二足転がっていて、何やらリビングが騒がしい。
こういうことは今までになかったら、どういう事だ?と恐る恐るリビングを覗いてみると、りつの他に見慣れた人が一人…
「ただいま…」
「おぅ!おかえりっ」
「おぅ、先輩おかえりっ!」
ちょっと待て…!?
何で健太が来てんだよ!
俺、聞いてないんですけど!?
普通に仲が良いことくらいわかってるけど、俺だってこの後の段取りを色々考えてたのに全部台無しじゃん!
とりあえず健太にこんな物見つかったら、どんなにからかわれるかわかったもんじゃないし、袋に入ってるクッキーを見つからないように寝室に隠して、手を洗いに再びリビングを通過する。
二人はゲームに夢中で、りつも俺には興味なさげで全く気が付きもしない。
頑張って作ったのに、それはそれでなんか腹が立つ。
泣いて喜ぶとか想像して、ニヤケてた俺が一番キモイじゃん。
手を洗い終わってまたリビングを通過すると、やられた〜とか言いながら盛り上がってる二人が何だか羨ましくなって、だったらもっと隼人と一緒にいればよかったなんて、急いで帰ってきたことを後悔した。
「将吾ぉ、隼人の試食どうだった?」
「別に…普通に美味かったよ」
「いいなぁ、俺も今度食べさせてよぉ」
「勝手に食いに行けば?」
嫌味混じりに適当に返せば、今度は健太が食い気味に攻めてくるから、返事もせずに黙ってればりつが勝手に話を続ける。
「なに?何が食べれんの?」
「ケーキとか甘い物♡」
「へぇ〜!先輩って甘いの好きだっけ?」
「あれ?健太は隼人の事知らないっけ?将吾の幼なじみのさぁ」
「うーんわかんねぇけど、ケーキは食いてぇ!」
そしてまた大笑いし始める仲の良い二人についていけなくて、俺は居場所を失って寝室に逃げ込もうとした。
「先輩もゲームやんね?」
「いい…寝る」
「将吾?やんないの?」
「いい!寝るから起こすなよっ…!」
寝室の扉をバタンと閉めてベットに潜り込むと、袋から甘い香りがする。
何を作ろうか、どうやって渡そうか…
今日の為に結構考えたのに、全然上手くいかないじゃん。
もう、こうなったらふて寝だ…っ!
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