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りつの事情
将吾が隼人のところに行くって言うから一人でじっとしていられなくて、暇そうな健太を掴まえて家に呼んだ。
別に将吾も知ってるやつだし、帰ってくるまでの暇つぶしと思ってたんだけど、思いの外ゲームが盛り上がっちゃって時間を忘れて楽しんでたら将吾が帰ってきてしまった。
しかも完全に怒ってるよね…
「あー負けたぁー。りっちゃんやっぱ強ぇわぁ〜」
「負ける気しねぇよ?」
「じゃあまぁ、先輩もアレだし?俺そろそろ帰りますわ」
「おう、付き合わせて悪かったな」
「いいって、今度そのスイーツ奢ってくれよ?」
「おぅ」
物分りのいい健太はキリのいいところで切り上げてくれて、俺は一人部屋を片付けながら扉の向こうの寝室の様子を伺う。
特に動きはなく将吾が本当に寝ちゃったんだって事を物語っていて、しーんと静まり返っていた。
ある程度片付いてから寝室の扉に手をかけると、中から静かな寝息が聞こえてきて、そしてどこからともなく甘ぁい香りが漂ってくる…
「将吾…寝ちゃったの?」
「…んっ…なに…起こすなって言ったろ…」
「怒ってんの…?」
「別に…」
「ねぇ、なんか甘い匂いするけど…」
するとは将吾慌てたようにベットから急に起き上がって、そこにあった袋を手に取り俺に取られまいと後ろに隠した。
「なっ、なんでもねぇよっ…」
「なんだよ…別に取ったりしねぇよ…隼人に貰ったの?」
「えっ?…ちげぇよ、これは…その…」
「別にいいよ、貰ったなら貰ったで…」
「だから違うって言ってんだろっ!これはっ、お前に…」
「え?俺に…?」
「うん…ちょっと早いけどホワイトデーの…」
「買ってきてくれたの?」
「ううん…作った。俺が…りつに…」
「へっ…////」
胸が物凄く苦しい…っ
将吾は顔を真っ赤にして袋を両手でぎゅっと握りしめ、下を向きながら俺にそっとその袋を差し出してきた。
「好きかどうかわかんないけど…隼人と一緒に作ったから味は保証する…」
「俺の為に…作ってくれたの?」
「うんっ、だからそうだって言ってんじゃん…っ////」
照れ隠しなのか少し強めに袋を渡されて、そっと中を開くと色んな形のクッキーが入ってきた。
「めっちゃ美味そう…食べていい?」
「うん…」
ふわっと甘い香りがたちこめて一口、口に含むとなんとも言えない甘さと嬉しさで泣きそうになってくる。
「んふっ…美味い…っ…めっちゃ美味い…っ」
美味しくて、でも勿体なくて少しずつ噛み締めながら味わうと、将吾が恥ずかしそうに口角を上げて喜んでる表情が見れて、俺はもう嬉しくてたまらない。
「ありがとう…将吾っ!すっげぇ嬉しい♡」
「よかった…あのさ、俺これ販売してみたいんだけど…いいかな?」
「えっ、これを!?いいの?いいんじゃない!凄いじゃん!」
「俺もなんか力になりたくて」
「もう十分力になってるけどね」
「俺も…頑張るから!」
「おぅ、ありがとな。なぁ…っ」
「ん? 」
「…抱いていい?」
「…うん///」
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