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大好きだった人
「んっ、ぅ…」
「ねぇっ、気持ちいい…っ?」
「ん…っ、きもちぃ」
そう返せば大概の男はニンマリと笑みを浮かべ、そうだろう?と言いたげに自分勝手に腰を振る。
こんなワンパターンな行為が気持ちいいわけないだろう?
だけど、相手が満足いくように誠意を尽くす。
それが俺のお仕事。
自己満プレーの奴なんかはまだマシな方。
中にはメニューに無いことを強要してきたり、逆にして欲しいと強請られたり、最近では断っても強引に迫られ無理やりさせられる事も少なくない。
「あっ、あぁっ…」
「イク…?もうイッちゃう…!?」
「ん…っ、イ、きそ…」
ただがむしゃらに腰を振ればいいってもんじゃない…
中でイクなんて滅多にないからどうにか自分で射精を促し、欲を吐き出せば相手も俺の中で勝手に果てる。
「はぁっ…はぁ…」
「あぁっ…今日も良かったよ…っ」
「そう?なら良かった…また来てね♡」
「もちろん、また指名するからね♡」
客が帰り全てが片付いた後、ベッドにダイブすると俺は、はぁ…と深いため息をついた。
金の為とは言え、何やってんだろ…俺―――
こんな姿、あいつが見たらどう思うんだろう…なんて、もう会う事もないであろう人を思い浮かべて今日も一日を終えた。
・・・・・
雪が舞い散るあの日…
大好きだった先生との想い出の保健室に別れを告げ、俺はなんとか無事高校を卒業した。
進学なんて出来るわけもなかった俺は、就職もせず昼夜とバイトの掛け持ちをしながら、暫くは実家でお金を貯めていた。
うちは片親で、遊び呆けてる母親がしょっちゅう違う男を連れて帰ってくるから、俺は昔からただの厄介者だった。
でも、大好きな先生がいてくれたから、何とかやっていけてたのに、アイツは突然…
俺の前から姿を消したんだ―――
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