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独り占めしたい
バイトが終わり携帯を確認すると、健太からメッセージが入っていた。
(りっちゃん意識戻った)
そっか…意識戻っちゃったか。
なんて他人には絶対に言えないような心境を胸の奥にしまい込んで、一先ず家に帰り将吾の帰りを待った。
「ただいま…」
「あっ、おかえり!りつさん、意識戻ったんだって!?」
「うん…」
「そっか、よかった!」
そう言いながら将吾を腕の中にぎゅっと抱きしめるけど、将吾は腕も回してこないし固まったまま動かない。
「心…っ、俺…っ」
「…ん?どうした…?」
「俺…っ、やっぱりりつが好きだ…っ」
ついにこの日が来てしまった…
分かってはいたけどやっぱり悔しいな。
将吾が帰ってくるまで健太に病室での話を聞いていたから、いつかこんな日が来るだろうということはわかってたけど、まさかこんなに早いとはね。
毎日毎日お見舞いに行く将吾の後ろ姿を見送るのも、正直辛かったし引き止めたくもなったけど、あんなに惹かれあってる二人を引き離すことなんてできなかったんだ。
だからせめて…せめて将吾が自分から離れていくその日までは、一緒にいたかったんだ。
だから最後くらいさ、俺のわがままも聞いて欲しい。
「…俺も、そんな事言われたってやっぱり将吾の事が好きだよ」
「…っ、心」
「離したくないなぁ…」
俺の服をぎゅっと掴み戸惑ってる将吾に、俺はまだ意地悪を仕掛ける。
出来ることならこのまま閉じ込めておきたいから。
「俺、将吾のこと大事にするよ?」
「んぅ…わかってるっ、心は優しいし俺の事大事にしてくれるし、俺…心の事大好きだけど…っ、でも、それ以上にりつの事が好きなの…っ、どうしようもなく好きなんだよぉ…っ」
俺の服から手を離し、その場に崩れ落ち床にぺたりと座り込んでボロボロと泣き出した将吾…
そんなにりつさんが好き…?
俺じゃダメなの…?
ならせめて…せめて今だけでもいいから…
俺だけのものになってよ―――
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