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別れ
そしてあっという間に1ヶ月の時が過ぎ、ついに心が留学の為日本を出る日が来た。
りつが完全に退院出来るまでにはあと数週間…
家はその間の月末までは使ってていいって言われて、正直少しほっとしていた。
この日までに一人で住むのに探していた物件を後一歩のところで別の人に取られたりと、なかなか上手いこといかなくて家が無くなるところだったから。
結局、最後の最後まで心に世話になりっぱなしだ…
そしてその日の朝、俺は嫌々ながらも仕方なく健太の車に乗り込み、一緒に心を空港まで見送りに行った。
この数日間、忙しくてりつに会いに行けなかった代わりに、心を見送ることをりつとのメッセージに残しておいたが、未だに既読がつかない。
もしここでやっぱり俺が心に着いて行くなんて言ったら、りつはなんて言うだろう…
俺はあの時りつの側にいたいと望んだけれど、りつの想いも同じなのか…
りつの本心が俺には未だによく分からない。
「将吾、今まで本当にありがとう」
「俺こそ…本当にありがとう」
「将吾のおかげでやりたい事が決まったんだ。将吾には感謝してる。帰ってきたらまた会ってくれるよね?」
「うん、もちろん」
「なぁ、俺は??」
ちょっと不貞腐れながら健太が心を睨みつけると、心はいつもの笑顔で健太を宥める。
すると健太は照れくさそうに頬を赤らめた…
「帰ったら連絡する。いや、着いたらすぐ連絡するよ」
「おぅ、そうして///」
「じゃあ、将吾…元気で…」
「心も、元気でね」
「行ってきます」
俺は俺の、心は心の人生を…
そんな気持ちを込めて心を送り出した。
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