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心の乗った飛行機が離陸するのを見送ると、健太は車のキーをクルクルと回しながらしゃがみこみ俺を見上げた。
「はぁ、修羅場にはならずに済んだか…」
「え?」
「いや、なんでもねぇ」
修羅場、とは…?俺が取り乱したり心に着いて行くとか言い出したりするとでも思ってたのか?
まさか、ここまで来ていくら俺でもそんな事しない。
「なぁ、この後りっちゃんのとこ戻るんだろ?」
「…わかんねぇ」
「は?なんだよ、寄り戻したんじゃねぇの?」
俺の歯切れの悪い答えにイラついたのか、すぐにまた立ち上がって俺を睨みつける健太に、後ずさりすると何となく言い訳を並べてみる。
俺だってどうしていいかわかんないんだ…
「だって…っ、りつは俺が心といる方が幸せだって言うから…りつの所に戻るべきじゃないのかなぁ…って」
「あぁ!?めんどくせ!んなの強がりに決まってんだろ!?りっちゃんがどんだけあんたの事想ってると思ってんの!?いい加減自覚持てよ、もう心を引き合いに出すな!」
「…っ、んぅ」
そんなにキレることないと思うけど、健太が言うことは最もだ…
心を理由に、りつとの関係を保留するのはもう終わり。
俺は心について行くことはしなかったんだから、もしりつの元に戻らないとしてもそれは心がいるからじゃない。
自分で決めなきゃいけないことのはずだ。
「どうしたらそんなに自信が無くなるんだよ…誰がどう見てもりっちゃんはお前の事好きだろうが。てか、お前のことしか好きじゃねぇじゃん、今も、昔も…なんも変わってねぇよ、あの人…。羨ましすぎるくらい愛されてんじゃん…っ」
そんなの自分じゃわかんないよ…
今も昔も愛されるってどういうことだかわかんない。
俺、りつに捨てられたんだよ?
どんなに俺の事想ってくれてても、俺のためだって言ってくれても好きだって言って抱きしめてくんなきゃわかんない。
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