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「ごめんなさい…」
「あ、いや…こっちこそごめん。あの、これありがとう…そろそろ帰るわ…」
「え?もう…帰るの?」
「あぁ、うん…」
「俺…もうちょっと夏川くんと話したいなぁ…」
「俺は…もう…」
「俺、こんな気持ち初めてで…夏川くんの事もっと知りたくて…」
俺はこいつがさっきから何を言ってるか理解できなくて、いい加減意図が知りたくて思わず問いただしてしまった。
「ねぇ、お前さっきからそれどういう意味?」
「…わかんない」
「わかんないならやたらに言うなよ、勘違いされるぞ?」
「ごめん、でもお願い!もうちょっとだけ…」
「ぅ…わかったよ」
押しに弱い俺に断るすべはなく、今にも泣きそうな顔でお願いされたらてわかったって言うしかなかった。
完全にペースを乱され頭をかきながらソファーに座ると、彼もも隣にちょこんと座り俺の顔をチラチラ見ながら質問をぶつけてくる。
「夏川くんは…なんであのバイトしてるの?」
「だからなんでそんな気になるの?」
「だって…バイトなんか他に沢山あるのになんであえて、そのぉ…そういうのにしたのかなって…」
「金が欲しかったから」
「お金?」
「そっ、手っ取り早く稼ぐにはちょうど良かったってだけ」
「そうなんだ…抵抗ないの?男の人と…その…」
「ないよ、元々シた事あったし、色々シてたし…」
「そう…なんだ…」
自分から聞いといてなんだよその顔…
てか俺も俺で何をベラベラと喋ってんだろ。
これ以上話してたら、知られたくない事とかも色々詮索されそうで怖いわ。
いい加お喋りがすぎたと思い、帰り支度をしようとソファーから立ち上がった。
「もうこの話よくない?いい加減帰るわ…」
「えっ、待って!」
立ち上がった瞬間腕を掴まれしつこいと思い彼の顔を見れば、捨てられた子犬のような表情に呆れて溜息をついた。
この大きな子犬を突き放すにはどうしたらいいか…
そうだ、もう二度と会いたくないと思わせるくらい衝撃的なこと言えば、もう関わってくることもないかも…!?
一か八か、たぶん彼には出来ないあろう提案を押し付けてみることにした。
「なぁ…お前さ、そんなに俺のこと知りたいなら今度店来いよ」
「俺…っ、そういうとこ行ったことないから…」
「だろうな、まぁ来れるもんなら来いよ。俺はそういうやつなの!わかったならもう帰らせて?」
すっかり黙ってしまった大きな子犬に、ニヤリと勝ち誇った態度をとって荷物を持って帰ろうと思ったその時…
「待って!行くよ…行くから…っ」
「お前…自分の言ってる意味わかってる?」
「うん…たぶん…」
完全に目が泳いでるこいつに店に来る勇気なんかないだろうし、そこまでして俺にこだわる理由もないだろうと、これで終わりという意味を込めて日時を指定した。
「じゃあこの日、この時間に俺の店来て俺を指名して?わかった?」
「…っ、わかった」
俺からメモを受け取り、書かれた日付を眺めているこいつが何を考えてるのか…何がしたいのか全くわからない。
これ以上詮索されたくもないし関わりたくもないけど、もし店に来るようなことがあったとしても、これは使えるかもしれない。
俺は、自分のの為に上手い事こいつを利用する事にしたんだ。
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