ラブリ

1/1
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

ラブリ

「わかりました。今すぐに交換してくださいとは申しません。充分に熟慮してください」  今日のところは龍宮寺たちも素直に引き下がるようだ。 「考える必要などないわ」  だがラブリは彼らをあざ笑った。 「えッ?」なにを言い出すんだ。 「ショーとラブリは、誰にも引き離せないくらいしっかり結びついているのよねェ」  彼女は()れなれしくボクの腕に(みずか)らの腕を絡めてきた。 「痛ッ、結びついているんじゃないだろう。それは関節を取りにきているんだろう」  このまま一気に腕を絡め取って、関節技へつなげる気だ。腕十字か、チキンウイングアームロックを仕掛けるつもりなのか。なんとか懸命にブロックした。危なくて仕方がない。 「では今度は契約書を持参しますので、ぜひともご検討ください」  そう言うと龍宮寺たちは引き下がった。 「いいえ、何度、こちらへいらっしゃっても答えは同じよ」  決してラブリも譲ろうとはしない。 「愛情とは愛する人を幸福にすることなのよ。ラブリに取ってはショーをなんだから」  ラブリは胸を張ってみせた。 「ううゥ」マジか。  果たしてボクは毎日、ラブリに関節技で痛めつけられてなのだろうか。 「では失礼」  龍宮寺らは憮然とした顔で家を後にした。 「ン」なんとなく複雑な気分だ。 「良かったわね。ショー」  ラブリはニコニコしてボクに微笑んだ。 「ううゥン」ボクは考えながら唸った。  これで本当に良かったのか。  それとも悪かったのか。すぐには判断できない。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!