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もちろんさ、考えを聞かせたまえよ。三度目の正直となれば良いね。その行方を、紅茶の香りとともに愉しませてもらおう」
俺と彼女はこうして謎解きゲームをする仲となっている。もっとも俺は回答側だ。して、その謎解きとはこうである。
とある未解決事案を彼女が語り、資料を手渡してくる。資料とは、言ってしまえば半倒叙形式の小説とでも言うべきものであった。登場人物中から真犯人が提示されるのだ。故にそこには動機・目的・手口といったものは何一つ判然としていない。
しかし未解決となる事案であるから手口は明らかになり得ない。そのため目的や動機に焦点を絞り、真相を突き止めることとなる。
要するに、ホワイダニットを紐解き真相へとコマを進められれば俺の勝利。でなければ敗北である。
これまでに出された課題は二つ。
一度目は、若い女性が数ヶ月おきに続けて姿を消す失踪事案。その実は、蝋人形館を営む主人による殺人とされた。
二度目は同じ街で起こる、地元名家の当主失踪事案。こちらも殺人であり、犯人は一度目同様とされた。
だが俺はいずれも正しいホワイダニットを導けなかった。誤回答の場合は打ち止めとなり次の課題へ進まされる。つまり不正解は俺にとって迷宮入りを意味していた。
そして三度目となる今回……ここで、いったん今までを整理しておこうと思う――
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