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平積みされた本が壁伝いに階段を作り、木棚には海外土産にありそうな意味深なトーテムが列をなしている。かと思えば日本人形が所々のガラスケースに収まっているのだ。そして天井には豪華なシャンデリアが、明かりを灯すことなく周囲のLEDをただ反射させている。
この異質さが癖になったのか、出てくる紅茶と菓子が目当てなのか、はたまたアルビノの店主との会話を楽しみにしているのか。俺は全てに答えを置かぬまま、非日常というルーチンをこれまでやり過ごしていた……。
店奥のテーブルには優雅な椅子が二脚。その一つに腰掛けた赤黒い瞳の女性は、耳に良い声で言う。
「いらっしゃい。早々に回答が聞けるのは喜ばしいけど、本当に暇人であり好事家であることが確定しそうな勢いだ」
意味深な笑みを浮かべる彼女の名は雄鶏有栖。変わった姓は、今は亡き母方のものであるらしい。歳は聞いてこそいないが、面立ちから三十路に届かぬくらいと思っている。女性の服の名前はあまりわからないが、清楚とオシャレを感じる長尺のスカートと、シャツあるいはニットの組み合わせが多い。それが、所々跳ねる白く艶やかな髪と絹のような肌によく似合うのだ。
「暇人か……そう言われるとなんだか微妙。大学生はわりと時間的に自由で、使い方次第なんだよ。この店だって閑古鳥みたいだけど?」
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