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***  それから僕たちは何度かお茶をして、たまにご飯を食べて、空いたバスで会えば隣の席に座るようになった。  僕が明日実に告白をしたのは出会ってから二週間後。五回目のご飯の後だった。  何回目には、と決めていたわけではなく、美味しそうにハンバーグを口に運ぶ明日実を見て思わず「君が好きだ」と口走ってしまっていた。  言葉が足りなかったと思い「僕と付き合ってくれませんか」と後から付け足す。  いつも彼女の前だと頭で用意するより先に口が動いてしまう。まるで不思議な力に心が引きずり出されるかのようだ。 「ありがとう」  明日実はお礼を言った。「でも」と続ける。 「私と付き合ったら、きっと後悔するよ」  少しの沈黙ののち、彼女は悲しそうな顔をしてそう言った。  その表情と言葉の意味を僕は正しく察することができない。  てっきり「はい」か「ごめんなさい」が返ってくると思っていたからだ。僕は混乱していた。 「えっと……それはOKってこと?」  おそるおそる尋ねると、明日実は突然噴き出した。   何がそんなに可笑しいのかわからないが、彼女はさっきまでの表情が嘘だったかのように声を出して笑っている。  それから彼女は目尻を拭いながら「うん」と頷き、左手の人差し指と親指で丸を作った。  涙を流しながら笑うその顔を、僕はきっと一生忘れないだろう。 「OKってこと」
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