底辺の女神の噂

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底辺の女神の噂

「性格か顔、もしくは頭。いや、胸かもしれない」 「キセは本当、興味ないよなぁ」  男子高校生が移動教室の合間に話す話題は大抵がくだらない話だ。確か今日の話題は”女子のどこを魅力的に感じるか”。 「キセはさ、知ってる? “底辺の女神”の噂」 「闇堕ちしたのか?」  友人の田上の謎の発言に俺は首を傾げる。 「違くて。付き合うと底辺の奴を上位カーストに引き上げる女子のことだよ」 「なんだそれ」  そんなレベルアップキャンディのような女が居るのだろうか。田上はお世辞にも薄いとは言い難い腹を撫でながら続ける。 「3組の環っていただろ。100kg超えで万年クラスのビリのやつ。アイツ、夏休み明けたらすげー細マッチョイケメンの頭いい奴になった話聞いた?」 「あーそういえば話題になってたな」  2学期直後はその話題で持ちきりだった。環は夏デビューだと持て囃され今では3組のTOP5だとかなんとか。 「そのプロデュースをやったのが、環の彼女の”底辺の女神”ーー永倉すみれなんだよ」  永倉すみれーー綺麗な女だったという記憶はかろうじてある。数年前誰かの会話で登場して、彼氏がいるというのを残念がる声を聞いた記憶も。 「残念だったな。世の中の良い女は大体売却済みなんだよ」 「良いなぁ、おれもエリートイケメンになりたい。永倉と付き合いてぇよ」 「お前自分でーーおい」  俺は田上の口を手で塞ぐ。  すれ違ったのは、その底辺の女神と呼ばれていた永倉すみれだった。流れるような長い銀色の髪。160cmはあるかという女子にしては長身の背丈に、伏せ目がちな目はまつ毛の長さを際立てていた。横目で見た顔はーー無表情。 「クールで可愛い」 「はいはい」  この時の俺は単なる他人の話の一つとして永倉すみれの話を聞いていた。  ーーしかし、次の日俺は突然の展開に困惑することになる。
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