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俺たち、付き合いました
「キセ! おれ、”すみれさん”と付き合ったんだ!」
「......妄想乙」
次の日の朝、田上が俺の机にやってきて放ったセリフはどう考えても嘘だった。年齢=彼女居ない歴の田上に彼女が突然できるのは考えにくい。
しかし、音もなく田上の腕に腕を絡めたのは確かに昨日見たばかりの永倉すみれだった。
「妄想などではありませんよ。章介くんの親友の木瀬川翠さん」
「は」
章介こと田上章介が顔を真っ赤にさせて永倉すみれを見ている。田上のそこまでの顔は流石に見たことがない。
「お前、3組の環と付き合ってたんじゃねーのかよ」
「とっくにお別れしました。フラれたと言ってもいいでしょう」
「使い捨てされたのかよ」
昨日の話が真実なら環をカースト上位に引き上げたのは永倉の功績なのに。
「違うんだよキセ! それはーー」
「章介くん、それは2人のヒミツ、でしたね」
「う、うん!」
(デレデレしやがって)
こう見えて俺と田上には10年の付き合いがある。男の友情と色恋は違うのかもしれないが、1日で親密な間柄のように振る舞われるのは鼻につく。
「ぽっと出の彼女の癖に保護者面すんな」
「......ぽっと出、ですか」
その後、田上とは違うクラスだというのもあって、徐々に時間が合わなくなっていく。
(まぁ、一応? 付き合いたてだしほっといてやるか)
試験やバイトといった日々の雑事に追われたフリをして、俺は田上のことを頭から追い出した。
それが良くなかった。
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