第六話 雑煮

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「ただ、たとえルームシェアをしなくても、機会があったらまたお餅を食べましょうね」 「はい!」 これを聞いて少し嬉しくなった。ルームシェアをしなくても、知り合い、というか、餅が好きな仲間?であることに変わりはないということだ。縁が切れるわけではない。 そして、お互い良いお餅情報があれば連絡しましょうと話して、私はマンションを去ったのだった。 天馬さんの言葉を聞くまで、ルームシェアに対して前向きに考えていた。だけど、今は本当に受けてしまっていいのだろうかと少しだけ悩んでいる。 結城さんに「天馬さんは本当に大丈夫なんでしょうか?」と尋ねてみたけど、「問題ありませんよ」と一言だけ返されて終わりだった。しかも、家賃などの重要な話に話題が移ってしまって、それ以上の追求もできなかった。 見事に流されてしまった感もあるのだけど、その話題を避けているというより、別になんでもないことのような流し方だった。 結城さんはポーカーフェイスっぽいところがあるから実際のところはわからないけど。 でも、それ以外には天馬さんのことについて結城さんからは何も言ってこなかったし、私次第と言うのだから、ルームシェアを受けることは可能なのだろう。つまり、天馬さんの「合格」は、一応言葉のまま受け取っていいのだと言える。 だけど、どうしても引っかかってしまう。 家賃は「ひとり当たりいくら」という仕組みだと聞いている。つまり、それを決めた天馬さんは、結城さんが誰かと一緒に住むこともあらかじめ想定してあの部屋を任せたはずなのだ。 だからルームシェアすること自体は問題ないのだ。となると、問題は私? 結城さんに迫ろうとしている女に見えたとか? いや、それなら合格ではないだろう。完全に拒否されたのなら悩まないのに、決してそういうわけではないから難しい。
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