第六話 雑煮

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ダメだ、全くわからない。住む世界の違う人なので、想像に限界がある。彼が帰国するまでの期間限定の入居とはいえ、家主さんなわけだからうまくやっていきたい。 部屋を掃除をしながらあれこれと考えてしまう。一度、あの家で暮らすことを自分の未来として想像してしまったこともあり、掃除中にこれは持って行けそう、これは処分だなと無意識に考えてしまっている自分もいる。本気で向こうに住むことを考え始めていたんだなと実感した。 部屋はきれいになるのに心は晴れない。 夜になり、夕食の準備が必要だったけど、なんとなく疲れてしまったので、パスタを茹で、レトルトのパスタソースで簡単に済ませた。今日は買い物に行こうと思っていたけど、なんとなく億劫で、昼も簡単に済ませてしまった。おかずがないと明日のお弁当を作れないと思ったけれど、まぁいいかと思った。 そっか、ひとりだと、本当に食事が適当になってしまうんだなぁ。ルームシェア中はもちろん気を張っていた部分もあるけど、食事は何にしようかと考えるのは楽しかった。 結城さんは良い食材や調味料を使っていたから、エンゲル係数が高そうだよなぁ。今回は払わせてもらえなかったけど、もし本当にルームシェアが始まったらそういうわけにもいかないし、食費もきちんと割り勘にしたい。 いくら割り勘でも高級食材をずっと買うのは大変そうな気もするし……。これは相談しないといけないなぁ。家賃諸々が安くても食費がとんでもないことになれば暮らしていけない。ま、食事は楽しいから、圧迫しない程度に食費が上がるのは仕方ないとは思うけど……。 そこまで考えて、ふと我に返る。 こんなふうに自然に思っている自分に驚いてしまった。 そっか、私、こんなこと考えるくらいルームシェアしたかったんだ。だから、天馬さんのことが引っかかるんだ。 そうなると、やっぱりこのままではいられない。やはりもう一度確認して、はっきりさせないことにはなにも進められない。
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