第六話 雑煮

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「そうだ、私、チョコ大福持ってきたんです。明日バレンタインなので、チョコにしてみました。これ、食べてみたかったものなんです。冷蔵庫に入れておいてもいいですか?」 「ありがとうございます。チョコ大福か……」 「どうかされました?」 考え込むような口調だったので、何事?と思い、立ち止まる。やっぱりチョコレートは良くなかったかな。そういう意図は全くないけど勘違いされてしまったのだろうか。 「いや、ずんだ餅があるんです。さっき打ち合わせで担当が持ってきて」 完全に予想外の言葉だった。 「ずんた餅……ですか? ええと、それは冷凍ではなく?」 「はい、今日出張から戻ってきたそうで……」 「チョコ大福も冷凍のものを解凍してしまっていて……」 チョコを変な意味で捉えられてなくてよかったと安心しつつ、うどんの餅、チョコ大福、ずんだ餅となると、なかなか重いものが揃っているなぁと胃を心配してしまう。 「では、うどんを食べながらずんだ餅を食べて、その後コーヒーとチョコ大福、という組み合わせはいかがでしょう」 しかし私の心配をよそに、結城さんはさらりと言った。 「盛りだくさんですね」 「割と空腹なので大丈夫だと思います」 「ちなみに、ずんだ餅は食後じゃなくていいんですか?」 「うどんのだしとずんだの甘さが合いそうな気がして。でもチョコ大福はコーヒーに合わせたいなと」 「確かに」 なんとなく、美味しそうなのが想像ができる。 「食事の時は緑茶にすればぴったりです」 楽しそうにそう言うのを聞いて、食の趣味が合うのは素晴らしいことだなぁと改めて思った。 こうしてまずはうどんを作り、そしてずんだ餅と共にいただいた。念のため私はうどんを減らしてもらった。結城さんは空腹と言っていたとおり、なかなかの食べっぷりで、今日の本題は食後にすることにした。
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