弟家族

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弟家族

「そういや健二と実香(みか)ちゃん、と彼女さん? はいつ来るの?」  姪っ子の名前を口にするのも久しぶりだ。  母は壁の時計を見る。 「そろそろかね」 「先に来てると思ってた」  弟の健二は隣の市に住んでいる。 「彼女さんが夜勤のある仕事しとるけぇ、仮眠とってから来るたい」 「ふうん。  ……そういえば、今年は結婚しろとか言わないんだね」 「健二が2回目の式をあげるからもうよか」  お前には期待しないと言わんばかりである。それはそれで傷つく。 「おや、噂をすれば」  外から車の音が聞こえた。  健二たちだった。 「おじいちゃん、おばあちゃん、あけましておめでとうございます!」 「はい、実香ちゃん、おめでとうございます」 「元気がいいねぇー」  しっかり挨拶をした姪っ子は、何かを期待するかのように母にきらきらした目を向けた。孫の期待に祖母は応える。 「忘れんうちにやっちょくね。はい、お年玉」 「ありがとうおばあちゃん!」  微笑ましい光景だ。しかし、それにしても。 「実香ちゃん、だよね?」 「そうだよ、健一おじさん、お久しぶりです」 「大きくなって……」  驚きのあまり、月並みな表現をしてしまう。  前に会った時は、きゃーきゃー走り回る幼児だった。それが、手足が伸びてすっかり「少女」になっている。若さがまぶしい。   「おーい実香、自分の荷物くらい持ってくれよ」  ガタイのいい男が歩いてくる。健二だ。  その横にいる人を見て、心臓が止まりそうになった。 「……あ」 「お義兄さん初めまして!  健二さんとお付き合いしています、鳴瀬彩(なるせあや)と言います!」  わざとデカい声で僕の言葉を(さえぎ)ったのは、今朝夢に出てきた元カノの彩だった。
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