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ちょっと気になる人と、途中まで一緒に帰った後の帰り道の思考
しりとりをして、2人きりの歩道。車道との境界の段差は、サーカスの平均台。踏み外せば、死ぬ。わたしが落ちそうになって、前をあるく彼の鞄に手をかける。
「転ぶ時は、自分1人でね。誰かを掴んじゃいけないよ」
いつかの遠足で、先生にそう言われたことを覚えてる。人は転ぶ時、落ちる時、何かにすがる。でも、友達を掴んではいけない。道連れにしてしまうから。
分かっていても、それは反射であり本能であるのだ。わたしは道連れにする。
あーあ、落ちちゃった。平均台はただの段差になり、汗ばんだ手が一瞬触れ合う。
あーあ。
もう一度言って、歩き出した。
なぞなぞを出し合って、2人きりの横断歩道。
鼠色のアスファルトはマグマで、白い線はそこから飛び出ている岩。
ひとつ、ふたつ、みっつ。内股になった爪先が、僅かにマグマに触れる。
まぁいっか。
駅についた。
バイバイをして、上り線、下り線に別れる。
あぁ、なれるものなら、餃子になりたい。
みんなから、愛されるんだ。
「お母さん、今日のお夕飯は餃子が食べたい!」
「昨日食べたじゃないの」
「今日も食べたいの!」
「仕方ないわねぇ」
親子は手を繋いで、餃子屋へ並ぶ。最後尾には、プラカードを持った若い店員が立っている。人々は彼のところへ次々と並ぶ。
私たちはどんどん焼かれ、旨い汁を垂らす。その匂いは商店街中に広がり、さらに求める者を増やす。
「3パックください、」
「これで買えるだけ、ください!」
「残りを全部ください!」
餃子を焼くお兄さんの頬が、熱気で赤くなる。やりがいと誇りを持って、ますます素晴らしい餃子が誕生する。
わたしはギョーザにくるまって、仰向けになる。まっすぐ伸ばした足と両腕のせいで、シルエットは三角形になる。
しばらく三角形を楽しんだ。
満足したから、今度は右へ左へ、ゴロゴロ動き回る。
あぁ、みんな幸せ、これが幸せ。
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