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秘密の餃子
ギョーザはときに、透明マントに近い働きをする。
ある夜は、泣いている声を押し殺すのを手伝ってくれる。またある夜は、親に内緒でゲームをしているところを隠してくれる。
《注意》
布団などのなかでゲーム機をしないこと。
説明書には、そうあったことを覚えている。
しかしわたしは、電源をいれる。隠れてでないとできないことがあるから。
歴史と漢字と数学のゲームしかしてはいけません。
そんなことを言われても、模範的ティーンエイジャーのわたしには無理なのです。
わたしはギョーザの中で、経験値を積んだ。
ある時は大きな犬の世話を疑似体験し、またある時は何度死んでも敵に立ち向かった。
勝利、敗北、諦めない心、友情、人の負の心、金銭感覚——失敗が許される場で、たくさん学んだ。
あぁ、なれるものなら、餃子になりたい。
秘密を全部、包み込むんだ。
温かい皮の中は、まるで宇宙。
肉汁は体内を巡り、溢れんばかり。
ニンニクも、ニラも、齧ってみなければどれだけ入っているかわからない。
沢山あれば、中には具の違う餃子もあるかもしれない。
味は?皮の硬さは?温度は?
人に教えてしまったらつまらないから、あれも、これも、それも、みんな秘密。
わたしから実る物語も、みーんな秘密。
秘密って楽しいね。
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