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紺碧の海
私は鯨になりたい。
大海原を群れで泳ぐ
エサは仲間と一緒に囲い込んで巻き上げる
銀色の波がしらをめがけて勢いよく
大きな口を開けてザバ~ッと上がれば
口の中に沢山の小魚が流れ込んでくる
淡い水色の浅い海から濃い紺碧の深海までやすやすと泳ぐ
私の大きさにかなうものはなかなかにいないだろう
私たちの群れの知恵にかなうものも中々にはいないだろう
雄大な私たちの姿を見るために小さな人間たちが海にやってくる
私の大きなフジツボのついた身体をみせてやろう
人間たちの船のそばに勢いよく上がり
船すれすれで一回転してやろう
そんな鯨の思いを受けて
私は船の上でフジツボのついた大きなザトウクジラとであった
船は転覆寸前 私は我に返った
今 鯨の中にいた?
私の思いが鯨に伝わったのだろうか
鯨は船の事なんか一向に介さずに
悠々と海原を泳いで行ってしまった
お~い 鯨
また一緒に海原を泳がせてください
いつかまた私が鯨になれるその日まで
元気で大海原を泳いでいてください
【了】
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