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シュトーレン
今年のクリスマスイブもしっかりシフトに入っているので、私はいつも通り佐和商店に来た。事務所で制服の上着を着て出て来ると、榊さんに捕まった。わざとらしく、悲壮感溢れる顔をしている。何事。
「すみちゃん……驚愕なんだが……」
「え。何ですか、来て早々」
「すみちゃんが作ってくれたシュトーレン、もう食べ切っちまう!」
……なんだ、と言おうか、ホッとしたと言おうか……。
「いつも通りですね。安心しました」
榊さんは目を剥く。
「俺、ケーキ売りロボットで疲れてんのに!酷くない!?」
「シュトーレンって、クリスマスまでに食べるお菓子なんですから。大正解の進捗ですよ」
呆れて言えば、榊さんはとても悲しげに目を伏せる。
「食べ切るのめちゃくちゃ惜しい」
そんな顔するなんて聞いてないし、少し狡い。動揺したのを誤魔化そうと、息を吐く。
「またお菓子作りますから。安心して食べ切ってください。食べてもらって、ありがとうございます」
榊さんはにやっと笑った。嫌な予感。
「今度はクリームのケーキ食べたいから、作りに来て」
本当、さらっとハードル上げて来るな……。作るけど。
「……分かりました」
「サンキュー」
了承すれば、暖かな手にくしゃりと一瞬、頭を撫でられた。
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