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髪型変化
いつも通り出勤して来た菫に挨拶した榊は、彼女の姿に一瞬で目を奪われた。
いつも低い位置で一つに結っているだけの髪が、今日は編込みの団子ヘア。印象がまるで違う。
「すみちゃん、その髪、」
「え、あ、あの。友人が遊びで結ってくれて」
髪に手をやって、菫は恥ずかしそうに俯く。
「やっぱり変ですかね。似合うからそのままが良い、って言われたんで、そうしたんですけど」
榊はにやっと笑う。
「いや。すげー似合ってるぜ」
「ありがとうございます……」
榊は事務所のドアに手を掛けた菫の耳に口を寄せ、囁く。
「正直、誰にも見せたくねぇな」
「!」
菫は耳まで真っ赤にして榊を見上げる。その顔がまた堪らなく可愛らしく、榊は笑みを深めた。
「俺以外の奴にそんな顔すんなよー?」
茶化して言えば、菫は即座にドアを開ける。
「いい加減にしてください。する訳無いじゃないですか。……こんな顔させるの榊さんだけなんですから」
菫はそっぽを向いて入り、ドアを閉める。
怒っても結局可愛い。そう思いつつ、言われた言葉の威力に、榊は頭を抱えた。
「何処で覚えてくんの、そんな台詞」
余裕が持てない自分が可笑しく、それでいて穏やかな気持ちになる。
「本当に面白い娘だよ、すみちゃんは」
少しばかり、以前と意味合いは変わったのだけれど。榊は可愛い恋人が出て来るのを、のんびり待ち構えた。
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