あるかもしれない未来の話

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あるかもしれない未来の話

※本編「クリスマスループ」を書く前にフライングで書いた話です 「ーー(すみれ)?大丈夫か?」 「は、はい。すみません」 「ゆっくり行きたいんだが、こう人が多いとな」 (さかき)は菫の手を引きながら、苦笑いを浮かべる。菫も小さく笑う。 「お休みですしね。仕方ないです」 休日の公園。公園と言っても、大きな公園で、娯楽施設もあり混雑している。 よく晴れて、行楽日和なことも原因の一つ。 「家で休んでたかったんじゃないですか?」 「心はそうなんだけどよ、身体は鈍るんだわ……」 「確かに……」 真剣に考え込む菫を、榊は複雑な表情で見ている。だが、息を一つついて、笑った。 「菫が焼いたクッキー、外で食べたいじゃん。こんな天気良いんだし。もっと美味くなるだろ」 「榊さん、よくそういうことさらっと言えますね……」 菫が少し頬を染めて俯くのを、榊は手を引いて木陰に連れて行く。驚く菫を木に軽く押し付け、その両頬を両手で優しく引っ張る。 「店の外で二人きりの時は、何て呼ぶんだっけ?」 菫は耳まで真っ赤になって顔を逸らそうとするが、榊は許さない。恥ずかしさで涙目になりながら、榊を見上げる。 「……(こう)、さん」 榊はニヤッと笑って、手を離す。 「よく出来ました」 「……意地悪」 菫の精一杯の抗議に、榊は優しく笑って頭を撫でた。 「直ぐ慣れるさ。一緒に居るこれからの時間の方が長いんだからな」 榊は歩き出す。菫は言われた言葉の意味を飲み込んで、榊の隣に並んで歩き出した。
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