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親友で発明家の佐藤の顔面が、とんでもないことになってしまったらしい。
「画期的な整形技術の開発に失敗して、大変な事になってしまったんだ。どれだけ大変な事態かを見に来てくれないか? とても恥ずかしくて、外出できないよ」
困り果てた佐藤から電話があった。
早速、俺は佐藤の顔面を拝みに行った。
玄関のドアを細く開けて、「近所の人に見つかる前に早く入れ!」と佐藤が焦る。
「とても芸術的な顔になったな。高値で売却できそうな感じというか」
と佐藤の家の中に入った俺は、正直な感想を言った。
「もっとストレートに言ってくれ」
「お前の顔面……モナリザじゃないか。なんだか、美しい……」
と俺が言うと、佐藤は満更でもなさそうに微笑みの表情をキープした。
「驚いただろ? なぜか、髪型までモナリザと同じになってしまったよ」
「ロングヘアーの佐藤は新鮮だな。ここ数年は、ずっとスキンヘッドだったもんな。でも、微笑んでいる場合じゃないのは理解できたよ。この状況は笑えないよな」
「ああ。困った、どうしよう……元に戻す方法が、わからないんだ」
困り顔のモナリザも美しかった。
どうしても佐藤を助けてあげたかった俺に、突如アイディアが降ってきた。
「その顔面をしているのが佐藤だけだから恥ずかしいんだろ? 他のみんなの顔面も同じようにモナリザになったら、お前は多数派になるから恥ずかしくなくなるんじゃないか?」
「ここに天才が現れた!」
佐藤は歓喜する。
「俺を誰だと思っている?」
「人気動画配信サイトで活躍中の、インフルエンサー、モクモク後藤様です!」
「そうさ、親友が大人気インフルエンサーで良かったな。すぐに、俺が顔面モナリザを流行らせてやるよ。早く、失敗した整形技術とやらを、俺に伝授しな! 大儲けしようぜ」
俺は夜明けまで、佐藤に整形技術の講義をしてもらった。
それからは俺の力により、モナリザ顔への整形が流行り、大半の人々の顔面が同じになった。(ちなみに俺も整形済み)
金に不自由しなくなった俺と佐藤は、堕落した生活を続けていた。
ところがある日、俺の家で佐藤と酒を飲みながらテレビを観ていると、驚きのニュースが流れた。
とある国の美術館で本物のモナリザの絵が悪戯されて、一部が破られてしまったらしい。
「ちなみに顔面部分以外の箇所は破られずに無事だったとのことです」とニュースキャスターが説明した。
「佐藤、お前の出番だ。急いで、その美術館に行くぞ!……」
「えっ? 一体、何を企んでるんだよ。絶対に行かないからな!」
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