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数日後、俺はモナリザが展示されている美術館にいた。
「観光地にある、顔を穴に入れて、記念撮影をするパネルみたいな感じで、ミスター佐藤を、使いたいんだが、大丈夫? もちろん、適切に、保存するから」
美術館の館長が、不慣れそうに日本語を使って尋ねる。
「OK!」
俺は元気よく返事をして、佐藤の生首を差し出した。
そして、館長から大金を受け取り、立ち去った。
―*―*―*―*―
一人で美術館に行った。
大金を払って貸し切りにしてもらったから、客は俺だけだった。
美術館の貸し切りという娯楽を、一度やってみたかったのだ。
ゆっくりと静かな館内を歩いて、芸術を堪能した。
佐藤の顔面がはめ込まれたモナリザの絵を鑑賞し終わって、絵に背を向けた瞬間、「この裏切り者め」と囁く声が聞こえた。
「良かったじゃないか。お前は、子供の頃から人に注目されるのが好きだったんだからさ。裏切り者だなんて、酷いこと言うなよ。むしろ喜べ」
俺は振り返らずに呟き、微笑んだ。
(了)
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