アクトレス あたし、女優になりたいんです!![読みきり]

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 ──アタマガイタイ──  痛みで目が覚めると、見知らぬ天井と壁とベッドが迎えてくれた。ここどこ?  身じろぎすると、パンツだけの姿なのに気づく。  しまった、やっちまったかと慌てるが、下半身に違和感が無かったので、とりあえずホッとした。 「あ、起きたかい」  声がする方に顔を向けると、どことなく貫禄がある年配の女性が部屋に入ってきたところだった。 「あ、あの、ここはいったい……」 あたしが問うと、年配女性はトレーに乗せたスポーツドリンクのペットボトルを手渡しながらおしえてくれた。 「ここはエターナル・プロモーションの事務所で今は午前十時くらい。あんたは昨夜遅く息子に連れられてここに運ばれたんだよ。名前は? 」  エターナル・プロモーション?! 永遠野薫の事務所じゃない?! 「あ、あたしは草野千種といいます。すいません、ご迷惑おかけしました」  パンイチなのを忘れて、ベッドから降りて土下座をする。 「母さん、もう済んだぁ──って、なにやってんのぉ」  いきなり入ってきた昨日の優男があたしの姿を見て慌てふためく。 「カヲル、ノックくらいしなさい。頼んだものはそこに置いといて、さっさと出る」 「は、はい」  優男は抱えていた荷物を傍らの机に置くと、さっさと出ていく。よく見たら今いる部屋は簡易ホテルの部屋みたいだった。  それを察したのか年配女性が説明してくれる。 「ここは事務所の簡易宿泊室。不規則な生活だからね。隣にシャワールームがあるから浴びといで。それからこれに着替えて」   優男が持ってきたのは衣服だった。 「あ、あの、いったい。それにあなた達は?」 「いいからさっさと浴びといで。あんたの服はゲロで汚れたから洗ってる最中だからね」  それを聞いてようやく昨夜のやらかしを思い出し、慌ててシャワーを浴びて用意した服に着替える。  そしてようやく年配女性は身分を明かしてくれた。エターナル・プロモーションの社長で優男の母親である菅尾映子(すがおえいこ)と。 「し、社長でしたか。この度は大変失礼致しました」 最悪だ、まさか憧れのヒト永遠野薫の所属事務所の社長相手に醜態を晒すなんて。あたしは人生が終わったと思い、このまま床からめり込んで地の底まで落ち込んでいきたくなった。 「まあいいわよ。出会いは面白かったけど、こっちも貴女に用があったから」 「あたしに?」 「草野千種さん、ウチの事務所にいらっしゃい。私が第二の永遠野薫にしてあげるわ」
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