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銀狼と黄蓋はチラッと目線をかわした。
「この邸は、俺たち以外いない。人払いをしてるっつーのは聞いたか?」
「はい、伺っております」
「それはこのためでもあったのだ」
黄蓋が一度席を外すと、琵琶琴びわごとと、何かを抱えて帰ってきた。飴色あめいろの、よく使い込まれた楽器だった。それをわたしに差し出して、
「ひとつなにか『唄』を奏でてくれないか」
と真剣に託した。
「最後までではなく、冒頭だけで良い」
「……? 構いませんが……」
もうひとつ、黄蓋は手に持ってきたものをそっと卓に置いた。なにやら小ぶりな籠。その中をわたしもそっと覗き込む。
わたしは息を呑む。
「え……! これは一体ーー!?」
⌘ ⌘ ⌘
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