初詣

1/6
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ

初詣

 体が羽根のように軽い。  冗談じゃなく、本当に。 「風香、ちゃんと掴まってて」  バイクの前に座る幼なじみの悠太がわたしの腕をぽんぽん叩いて、そう合図した。 (大丈夫! わかってるよ!)  答える代わりに腰に回していた腕にぎゅっと力を込める。そうすると、細身に見えるけど筋肉質な体質なのが伝わってくる。  片想いの相手と密着してる状況はトキメキにあふれてるんだけど、気を抜くとうっかり吹き飛ばされてしまうから割と大変なんだな、これが。  わたしは先週から、急に“羽根のように軽く”なってしまった。  一回は、隣町まで突風で飛ばされて、すっごい怖い思いもした。  あのときは悠太がこうしてバイクで迎えに来てくれたんだよね…。悠太が現れた瞬間の心強さを思い出すと心臓がきゅうっとなる。 今、わたしたちは出雲に向かっている。この状態をもとに戻してもらうために。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!