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俺の怒りは頂点にくる
新幹線の中でも落ち着く事ができず、急いで乗ったタクシーに道を聞かれて、思考は停止する。
あまりに嫌いすぎて、あのクソ野郎の番号どころか、どこに住んでるかも俺は知らず、怒りのパワーメーターは、ゆっくりと沈んでいき、タクシーの運転手に自宅の住所を告げた。
「まったくついてない……」
マンションの手前で下ろしてもらい、坂を登りきった所で、ぼーっとマンションを見上げて突っ立っている長身で、アッシュの髪色の男。
逆光でもわかるその男に、沈んでいた怒りのパロメーターが、徐々に上がっていく。
名前を呼び、振り向いた顔は目を丸くして驚き、どうしたのかと、駆け寄ってくる虎白の姿に、怒りのメーターはマックス。
虎白の手を掴み、慌てる虎白を一喝し、家のドアが閉まる音を聞いた後、繋いでいた手を荒く解いた俺は、ソファーを指差す。
「座れ!」
「黒兎さん?」
「いいから! ソファーに! 座れ!」
何を言っても無駄だと踏み、両手を上げて言われるがまま、腰を下ろした虎白に、仁王立ちで向かい、一度深く息をする。
「荷物でも取りきたのか? 灰田の所はさぞ居心地が良かっただろうな!」
「黒兎さん、うてぃちち……」
「うるさい黙れ! この家を出ていって店まで灰田の所に行きたいって? そがにわしと離れたいのか!」
いきりたつ俺の言葉に、一言も反論の言葉を口にせず、笑顔が消えた昨日と同じ顔で、虎白は、俺をじっと見ている。
こんな顔を見るために、会議をサボって京都まで帰ってきたのか? 違うだろ……他に言わなきゃいけない事があるだろ?
腹決めろ、葛目黒兎!
「悪い……そうやない……一回しか言わんし、わしが言うたちこと誰にも言いなさんなや?」
何かを期待した虎白は、背筋を伸ばし、大きく何度も頷いて、俺の話に耳を傾ける。
こう身構えられると、やっぱりやめたは許されないだろう……どこから言うか迷うが……まずはここからだ。
「悪かった……お前が俺を好きでいるからと安心してた……ここに……居てほしいんだ……他の誰かと居るお前なんて想像しただけでも耐えられない……」
「黒兎さん……」
「あと……嘘をついてた……再開した時、初めてのフリをした……忘れることないだろ? 聞き慣れない言葉で、嬉しそうに笑って俺がコーデした服を着てきたんだ……今でも鮮明に覚えてる」
相手に伝えたい大事な言葉は、方言を使わずに、一つ一つ、勇気を持って、隠していた心を曝け出していく。
「帰る前に会いたかったから……『一目惚れ』そういったでしょ?」
これだから、俺は虎白から離れられないんだ……甘やかしているのは俺じゃなく虎白の方だ。
俺は虎白に甘えてる……それは認める。
ただ、どちらが相手を愛してるかと言えば、虎白が否定しても譲れない……俺が……俺の方が虎白を愛してる。
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