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冒険者ギルドの大きな石造りの建物を見上げてゆっくり息を吸い込む。
これが俺の第一歩。
思いながら足を踏み出そうとした俺の背後は騒がしくて、ドンッと背中に衝撃を感じた瞬間に俺は顔面から地面に倒れ込む。
「っ痛ぇ……」
呻きつつ、顔の痛みとのし掛かられている重さに眉をひそめた。
「あれ?ライじゃん!お前、何やってんの?」
しゃがんで覗き込んできたのはたまにうちの酒場に来る冒険者の一人、テオ。
所々にある擦り傷や服の汚れは今、帰還したばかりだからだろう。
「……とに……く……重い」
何とか動く右手でタシタシと地面を叩くと、テオはケタケタと声を出して笑った。
「だよなぁ?酒場の息子にこの大男たちはキツいってなぁ?おら!退けってお前ら!」
テオが言いながら雑に俺の上に重なっている人たちを退けてくれる。
「ゲホッ……あー!めっちゃあちこち痛い」
むせて体をさすると、テオはまた俺を見て笑った。
「大丈夫かぁ?早く帰ってリックさんのシチューでも食ってろよ!」
「いや、違うって!!俺、今日、誕生日なんだよ!十五になったの!!」
「あ?そうなのか?じゃあ、商業者ギルドはあっちの通りだぞ?」
指を差されて俺はバッと立ち上がる。
「違うっつの!俺は冒険者になるんだよ!」
「……はぁ?」
テオは信じられないというように顔を崩して、そして、すぐに大笑いし始めた。
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