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「お、俺をビビらせつもりか?」
「違う」
「でも、冒険者を諦めさせたいんだろ?」
「……そうだな。お前には危険すぎる」
シャツを戻してテオがよっこいせ、と立ち上がる。
テオが立っただけなのに俺から太陽は見えなくなった。
思いっきり顔を上げないとテオの顔は見えなくて、まっすぐ前はテオの胸。
鍛えられた腕も近くでよく見れば傷跡だらけだ。
「リックさんとミリアさんと一緒に酒場で笑ってろよ」
俯いた俺の頭を大きなテオの手が覆ってワシャワシャと雑に髪を掻き混ぜてくる。
「みんな心配してただろ?」
言われてここ最近、幼なじみのルイや酒場に来た冒険者たちに言われたあれこれが蘇った。
確かに……みんなには止められた。
誰も、やってみろ!なんて言ってくれなかった。
「……ヤダ」
「は?」
「それでも……ヤダ!!」
テオのシャツを掴んでグッと涙を堪える。
泣くもんか!と必死に涙と戦う俺は悔しいことにただのクソガキだ。
それでも……俺は……!!
「っとに……仕方ねぇなぁ?」
俺の口の端を掴んでテオがグイッと引き上げる。
「ルイといい、お前といい……本当、人の言うこと聞かねぇな?」
腰を屈めて困ったように笑うテオに俺はイーッと歯を見せてギルドの扉を開けた。
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