憧れ

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 最高のSランク冒険者であるテオは昔から俺とルイの憧れで、ルイの両親が死んだのはショックだったけど身寄りのなくなったルイをテオが引き取ると決まった時はめちゃくちゃ羨ましかった。  たまに酒場に来た時にだけ聞けた冒険者の話が毎日聞けるなんて……って。  ルイが剣をうまく使えるのだってテオに教えてもらったからだと思っていたのに。 「テオはあんな大男で目つきの悪い赤髪だろ?でも、実はめちゃくちゃ怖がりなんだよ」 「え!?」  豪快に笑っていつも雑な姿しか知らない俺は信じられなくて笑ってしまう。 「本当だよ。実はルイを引き取って冒険者として仕事をするのは辞めて隠居しようとしてたくらいだしね」  父さんが皿を拭いていた手を止めてこっちを見た。 「でも、テオが行かなければ他の冒険者が行かなければいけなくなるだろ?その冒険者が死んで、テオはまた仕事をするようになっただけさ」  父さんの話を聞いてルイの顔を見ると、ルイはこくりと頷く。 「本当は虫も暗闇も怖いビビりなのに……他の人が傷ついて欲しくないから自分が行くんだよ。自分が斬られても笑っちゃうくせに、人が少しケガをするだけで心配しまくって落ち込む奴なんだ」  ルイはテオとお揃いで着けている革のブレスレットを見つめてキュッと唇を引き結んだ。
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