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灰かぶり姫の裏面
お城がある都市の中心部とはかけ離れた古びた街に、シンデレラと召使いは到着しました。
「この辺りよ」
シンデレラは軽い身のこなしで馬から降りると、同じく下馬した召使いと共に街の大通りへ歩いていきました。手綱を引きながら、人通りの多い道の中を抜け、いそいそを歩を進めます。
しかし、目当ての家はなかなか見つかりません。探している間にも、日がどんどん高く昇っていきます。
そうして、いくつもの家が並ぶ、商店街から少し離れた小路にたどり着きました。
「・・・・・・ここだわ」
シンデレラはその中の一軒を見上げ、そっとため息を漏らしました。隣に立つ召使いが、ごくりとつばを飲み込みます。
そこは、王子に出会う前にシンデレラが住んでいた家でした。世話をするものがいなくなった今や、壁の塗装は剥がれ落ち、屋根は錆び、周囲には雑草が生い茂っていました。
だというのに、家の中からはぼそぼそと声が聞こえます。しわがれた老婆と、潰れた蛙のような醜い声。
聞き覚えがあるどころではありません。シンデレラにとってそれは、在りし日、自分を散々虐めぬいた継母と二人の義妹の声でした。
「まったく、本当に最悪だよ。あの小娘が出ていったせいで近所の者からは笑いものにされるし、家はぼろぼろだし・・・・・・」
「そんなの、新しい召使いでも雇えばいいじゃない」
「何言ってるのよ。あんたたちが街でも好き放題にふるまうから、すっかり顔を覚えられちまった。おかげで買い物に行くだけでも、後ろ指をさされる始末だよ」
「知ったこっちゃないわ」
「ええい、大口を叩くんじゃないよ。大体あんたらがね・・・・・・」
中から聞こえてくるのは、言い争うような刺々しい言葉の押収です。けれども怯まず、シンデレラはきっと前を向きました。
「入るわ」
「し、シンデレラ様」
召使いが止めるよりもはやく、しかし、シンデレラは軋む戸を一気に開け放ちました。
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