神様、鈍感にしてください

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 神頼みをして1か月。相変わらず私は繊細だった。相手の表情の変化を読み取り、抱えている感情に気付く。そこは変わっていない。しかし、それを悪い事だとは感じなくなった。相手から負の感情を感じる時は寄り添って、一緒に問題を解決できる。ほんの小さな優しさでも気付き、喜びを得る。無限に広がる想像力は、不安になる為に使うのではなく、どうすればより良くなるかに使うようになった。繊細だからこそ、天気や四季のちよっとした変化にも気付き、そこから幸せを得る事ができる。そして何より繊細だからこそ、この心境の変化に気付き、自分が神様の抽選に当たったのだと確信できた。今の私は、自分が繊細だからといちいち悩まないし、むしろ繊細である事に誇りを持っている。神様はきっと、私を繊細なまま鈍感にしてくれたのだ。      お礼参りに訪れたあの神社。手を合わせ、楽しい日々を送っている事を報告すると、境内に強い風が巻き起こり、落ち葉が踊るように舞い上がった。まるで、神様が嬉しそうに笑っているようだ。何故分かるのかって?だって、私は繊細だから。
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