母が死んだ日

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やがて高校大学を卒業し、社会人となった。 それでもあの日母に会ったことは昨日のことのように覚えていた。 そうこうしているうちに、久しぶりに祖父母の家に遊びに行くことになった。 何年ぶりだろうか。 祖父母は確実に年を取っていたが、高齢にもかかわらず元気なようだ。 昼食を食べた後、その辺を散歩しようと祖父母の家を出た。 田舎のおいしい空気。家の前で大きく伸びをしていると、女が歩いて来るのに気がついた。 中年の女性。一目でわかった。その女は母だった。思わず見ていると、女が気付く。 なにこの人、と言った顔で私を見る。 しばらく私を見ながら歩いていたが、やがて小走りに立ち去った。 私と同様に年を重ねてはいるが、あの女は間違いなく私の母だ。 しかし母は、私を息子だとは気づかなかった。 小学生から成人ではその見た目に変化が多いものの、実の息子に全く気付かないなんて。 私は思った。 やはりあの時、母は死んだのだと。        終
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