1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「先生、この度は大賞受賞おめでとうございます!」
「今のお気持ちを一言お願いします!」
「今回の恋愛小説はどのようなお気持ちで書かれたのでしょうか?」
有名ホテルでの受賞式。ついにこの日がやってきた。長年諦めずに書いてきた小説が大賞に選ばれたのだ。
次々にインタビュアー達がマイクを突きつけてくる。カメラのフラッシュが眩しすぎて目が開けていられない。
「あー、押さないでくださーい。危ないですよ。えーと。まずは、本日はありがとうございます。このような大賞をいただけた事に感謝しております。
えーと、この【特別な一日】と言う小説は…」と言いかけてふと思った。
〝あれ?アタシ、恋愛小説なんか書いたっけ?アタシが書いていたのは確かミステリー小説だったんだけどな…。まっ、いっか。大賞とれたんだし…。小さいことは気にせずいこう。〟
「先生どおかされましたか?」
一人でブツブツ言っている私を見て
インタビュアーが心配そうに質問する。
「あ、いえ、失礼しました。えーと、これは私の実体験を元に書きました。ぜひ、たくさんの方に読んでいただけたら幸せです。」
〝何だかよく分からない説明だけどまぁいいか…。〟
「本当に信じられない気持ちです。私のようなド素人が書いた小説が大賞をいただけるなんて。本当に夢のようです。」
挨拶を済ませ深々とお辞儀をした。そして祝福の拍手が鳴り響く?…はずだった。
「あれ?」
不思議に思って顔を上げると妙に静まり返っている会場。さっきまで「先生、先生!」とチヤホヤしていたインタビュアー達がニヤニヤしている。
カメラマン達もカメラを床に置いたままニヤついていた。
インタビュアーの一人がニヤニヤして言った。
「せんせー、コレ、夢のようじゃなくて夢だから。」
「へっ?」
その後にカメラマン達や司会者までもが口々に続ける。
「そうそう。夢ですよ。」
「夢に決まってるじゃないですか。」
「ドリーム、ドリーム。」
「ゆーめ、ゆーめ!ゆーめ、ゆーめ!
それ、ゆーめ!あっそれ!!」
そう言って全員で手拍子しながら近づいてくる。ニヤニヤしながら私を取り囲んだままどんどん近づいてきた。
〝何だコイツら?やめろ!やめろー!やめろってー!〟
最初のコメントを投稿しよう!