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聖女は不要?
この世界は女神と魔神によって創られた。
始めは協力していた2柱の神は、時と共に対立し、女神は人間を、魔神は魔族を創った。
そして女神は魔族から人間を守る者として勇者と聖者、もしくは聖女を、魔神は魔族を統べる者として魔王を選ぶ。
勇者と聖者(聖女)は、協力して魔王に立ち向かわなければならないと定められている。
なのだが……。
「はっ!」
薄茶色の髪をなびかせ、気合いとともに勇者ラントは魔物を両断した。
魔物は悲鳴もなく絶命し、ただの肉片となる。
「大丈夫か、皆?」
ラントはエメラルドグリーンの鋭い瞳を仲間たちに向け、無事を確認する。
「ああ、ラントが全部倒したからな」
苦笑いをするのはラントの倍くらいの歳の剣士ナタカだ。
「ラントがいれば、魔物なんてあっという間だよな」
つまらなそうに口を尖らせるのは、魔法使いの青年ムジカである。
「確かに俺がいれば十分かもな。
だからアンナ、帰っていいぞ」
そうラントが声をかけたのは、柔らかそうな金髪の美しい18歳の少女である。
「なりません。聖女は勇者と共に魔王と戦う定めですから」
アンナはサファイアブルーの瞳でラントを見返し、毅然と断る。
「今までお前が役に立ったことはないだろ? それなら元のところに戻って、民を助けた方が建設的だろうが」
グッとアンナは言葉に詰まる。
確かに共に旅に出てしばらく立つが、アンナが皆の役に立ったことはなかった。
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