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目の前に持ち込まれたのは、ディランが見つけたあの紫の花が咲く植物だった。
これは庭師に頼んで、部屋に運び込めるように鉢に植えてもらったもの。
庭師は床を汚さないよう、布を広げた上に鉢を置いた。
今は季節を過ぎてしまったので、だいぶ葉がしょんぼりと力を失い、色味も黄色く枯れてしなだれている。
「これが……?」
「はい。正確に申し上げれば、この植物の根(・)にできる部分です」
わたしが合図すると、庭師は根本から思い切りよく植物を引っこ抜いた。
それまで土に埋もれていた部分。
軽く土を払うと、ゴロリと手のひら大の茶色い歪な丸い物体が、いくつも細いひげ根に絡みつつ掘り出された。
「この丸い部分がーー別大陸では麦に代わる主食とされている、馬鈴薯(ポテト)です」
「馬鈴薯(ポテト)……」
無骨な茶色い塊を見て、お父さまは小さく呟いた。
そう。
この芋こそ、これからやってくる飢饉を変えるほどの力を持つものだった。
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