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青年は小さな違和感を覚えた。
「あの中年男、農具の他になんか棒みたいなもんも体に結えてんのか……?」
ここまでは巧妙に衣服に隠されて目立たなかった、中年男の衣服の下の膨らみが目についた。
「なんだあれ。銃みたいな…いや、ちげぇよな。農夫がそんなもん持ってねえよ」
「おい」
そんな青年の思考は、顔馴染みに声をかけられて中断された。
このときの彼の気づきが、男爵領だけでない多くの地に影響をあたえるものだったとは、知りもせずにーー。
「そろそろ打って出るらしいぞ!」
「つ、ついにか」
青年は武者震いした。いくぶんかは怯えの方が多かった。
「行くぞ!」
中年男の大きな掛け声とともに、農夫たちは城へ向かって一歩を踏み出した。
するとーー
「俺たちは正しい!」
「正しい!」
震える体に、大声が響いた。
「飢えているのは領主のせいだ!」
「そうだ、そうだ!」
声に押し出されるように、青年たちは城へ近づいていく。
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