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自分の意思ではなく、強制的に背中を押されるようにしながら。
「……な、なんなんだ」
青年もこの熱気に飲み込まれそうになる一方で、理性のどこかが警鐘を鳴らした。
あれ? なんか、おかしくないか?
周囲をよく見ると、大多数を占める顔見知りの男たちは、自分と同じ強張った表情。
声をあげているのは、中年男と、ごく少数のあまり見覚えのない男たちだ。
土壇場でこんな尻込みするなんて、情けねぇ。
でも、なんか、なんかおかしくねえか。
なんでこんなこと始めちまったんだっけ……。
ーーいや、でも、逃げ出せねえよ!
混乱が頂点に達した時だった。
「皆さん!」
殺伐とした熱気が立ちこもる城の前に、清涼な風が吹いたように感じた。
凛と美しい、鈴の音のような少女の声が響いたのだ。
彼らの前に現れたのは、女神だった。
「銀の、女神さまだ……」
隣の男が農具を取り落とした。
伝説の中の一幕を目にしているようだった。
女神は真っ白な装束をまとって、陽光に照らされて長い銀糸の髪を風に靡かせている。
日に煌めいて、銀の髪はどんな宝石よりも美しく感じられた。
と、同時に、彼らは気づく。
彼女が背にしているものを目にして、農夫たちは冷や水を浴びせられたように我に返った。
鳥肌が立ち一気に暴動の熱が冷却されていくのを、青年も肌で感じた。
「あ、あれはーー!」
⌘ ⌘ ⌘
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