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第三十六話 舞踏会
あの暴動を未然に防いだ日からしばらく。
今日はエドワードと参加する、初めての舞踏会だった。
おそろいの淡いすみれ色の衣装には、特別なあしらいをしている。
実はこれも、遠回りしながら男爵領を救うことに繋がるはずなんだけどーー。ううん、それだけじゃなく、この国全体に役立つはず。
わたしだけでは力不足が心配だったけれど、こうして王子であるエドワードが一緒だから、参加する意義は大きい。
ええ、そう。
この衣装に興味を持ってもらうのは大事なことよ。
……つまり、それだけ注目されるということだけど。
とにかく目の前の舞踏会とは違うことを考えていないと、慣れないこの場に背を向けて家に帰りたくなってしまいそうで、わたしは高速で頭を回転ーー空回りさせて気を紛らわせていた。
父と参加した社交界は、慣れないわたしに配慮してくれたこぢんまりしたもので、他の参加者も父とごく親しい好意的な人々ばかりだった。
今回はーー今回は規模もなにもかもが桁違いなのだ。
扉の向こうからは、すでにざわざわと人々の声が響いている。
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