第三十六話 舞踏会

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「緊張している?」 「……とても」  エドワードはふわっと笑った。 「大丈夫。僕がついてる」  組んだ腕は以前より頼りがいがあり、少しだけわたしの心も軽くなった。 「さあ、行こう」 「ええ」  一緒に会場へと足を踏み出す。  まばゆい光。  人々のざわめき。  しだいに明るさに慣れてくると、色とりどりのドレスの色彩が目に飛び込んできて、会場の熱気がわたしの肌を包んだ。  女性たちの視線がこちらを向いているーーきっとわたしではなくエドワードだけをーーと思って気を逸らす。 「まぁ!」 「美しい……」  緊張でうまく聞き取れなかったけれど、広間に集まっていた人々がなにか声が漏らしていた。 「エドワード殿下とご一緒されているのはどなた?」 「ほら、公爵令嬢よ! アイリーン嬢だわ」  ざわめきはわたしたちを中心に波及していく。注目を集めるのには慣れていないので、かなり恥ずかしい。  けれど、品位を失わないように背筋を伸ばし、微笑みを絶やさない。  これを幼い頃からエドワードは軽々とこなしているのだから、尊敬せざるを得ない。
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