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そしてーー。
さっそく会場では次々と声をかけられ、そのたびにわたしたちの装いを興味津々に尋ねられた。
「エドワード殿下、アイリーン嬢、ご挨拶申し上げます」
「ああ」
「こちらが妻です」
「どうぞよろしくお願い申し上げます。それにしても、本当に素敵なお召し物だこと。とくに髪飾りや胸元にあしらわれている紫のお花が……」
「こちらですか? ありがとうございます」
わたしの企みは成功への一歩を掴んだようだ。にっこりと笑顔で応対する。
「珍しい花なので、いまはまだこの国でも公爵家にしかないそうですよ」
すかさずエドワードが後押ししてくれる。
都会のマダムたちは新しくて珍しいものに目がないのだ。
それが、高貴な立場の者が身につけ始めたとなればなおのことーー。
「まあ! いったいなんというお花ですの?」
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