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「ご興味がおありですか?」
「実は妻もわたしも、最近は珍種を集めた温室づくりに凝っていましてな」
紳士が髭を撫でながら言う。
「左様でしたか。実はこれから、父が公爵家の商会に取り扱わせようかと申していたのです。よろしければ、何株かお分けいたしましょうか……?」
「それは素晴らしいね、アイリーン」
エドワードがもっともらしく言う。
「そういえば、この可愛らしい花は、それだけではない有用な秘密があるんだろう?」
「あら!」
「なんと、いったいーー?」
さらに紳士と夫人の興味をうまく引いてくれたから、わたしはあえてここでは焦らすことにした。
「殿下、それはまだ……。調べている途中ですの」
少し困ったように首を傾げて見せる。
紳士たちは身を乗り出し、声をひそめて尋ねてきた。
「そ、それは教えてはもらえないだろうか。いやはや、王家と公爵家のことだ。さぞ価値があるのだろうがーー」
目をらんらんと輝かせる彼らに、わたしとエドワードは視線を交わし、心の中で喝采をあげた。
「そうですね、貴方さまになら……。でも、まだ広くは知らせない情報なので、口外はお控えいただけますか?」
これこそが狙いだったのだ。
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