第三十六話 舞踏会

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「ご興味がおありですか?」 「実は妻もわたしも、最近は珍種を集めた温室づくりに凝っていましてな」  紳士が髭を撫でながら言う。 「左様でしたか。実はこれから、父が公爵家の商会に取り扱わせようかと申していたのです。よろしければ、何株かお分けいたしましょうか……?」 「それは素晴らしいね、アイリーン」  エドワードがもっともらしく言う。 「そういえば、この可愛らしい花は、それだけではない有用な秘密があるんだろう?」 「あら!」 「なんと、いったいーー?」  さらに紳士と夫人の興味をうまく引いてくれたから、わたしはあえてここでは焦らすことにした。 「殿下、それはまだ……。調べている途中ですの」  少し困ったように首を傾げて見せる。  紳士たちは身を乗り出し、声をひそめて尋ねてきた。 「そ、それは教えてはもらえないだろうか。いやはや、王家と公爵家のことだ。さぞ価値があるのだろうがーー」  目をらんらんと輝かせる彼らに、わたしとエドワードは視線を交わし、心の中で喝采をあげた。 「そうですね、貴方さまになら……。でも、まだ広くは知らせない情報なので、口外はお控えいただけますか?」  これこそが狙いだったのだ。
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