第三十六話 舞踏会

6/8
前へ
/232ページ
次へ
 馬鈴薯に、食物や花であるという以上の、「特別な」王家と公爵家が重用しているーーという価値を見出してくれた彼らは、自分たちの領地で積極的に栽培してくれることだろう。  今日は、すでにもう何度かこのやり取りを、さまざまな地方の有力者と繰り返していた。  確かな手応えと、変化。  少しずつ、ほんの少しずつだけれど、一度目の歴史や不幸は変わってきている。  その感覚が、わたしにとってかけがえのない希望だった。  けれど油断ができないことも身に染みた。  わたしが加えた変化によって、新たな危機が起こることだってあると分かったのだから。  男爵領の暴動で、王太子の危機が去ったと思いきや、エドワードの命を危険にさらす可能性があったように……。  気を引き締めなければ。  でもーー。 「アイリーン?」  それ以上に、今だけは。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

143人が本棚に入れています
本棚に追加