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第五話 記憶~夕暮れ~
それは夕暮れの公爵邸。
この夏より少し前の、わたしがもっとも病弱だった頃。
そして、わたしの人生に、エドワードが光をもたらしてくれた日……。
⌘ ⌘ ⌘
窓から差し込む夕日がまぶしかった。
あぁ、夢を見ているのだと、わたしは自覚した。
それも、ちょうど眠る前に思い出していた、あの日の出来事を夢で見ている。
……その日、侍医の診察が終わり、ベットでうとうとしていたわたしは、ふと目を覚ました。
自分の手は、11歳のわたしより少し小さい。
9歳くらいのときだろうか。
何気なく庭を見下ろすと、揺れるレースの隙間から、見慣れない小さな人影が静かに佇んでいるのが見えた。
それは頭までローブを被った男の子だった。
年齢はわたしより2つ3つくらい上だろうか?
フードのすきまから、整った鼻筋と少し日に焼けた肌が見えた。すると、
「……君は妖精? それとも天使?」
急に謎かけのような質問を投げかけられて、
「えっ?」
わたしはびっくりして目をパチパチさせた。
「それとも噂のとおり、本当に幽霊なのか……?」
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