第五話 記憶~夕暮れ~

1/9
前へ
/232ページ
次へ

第五話 記憶~夕暮れ~

 それは夕暮れの公爵邸。  この夏より少し前の、わたしがもっとも病弱だった頃。  そして、わたしの人生に、エドワードが光をもたらしてくれた日……。    ⌘ ⌘ ⌘  窓から差し込む夕日がまぶしかった。  あぁ、夢を見ているのだと、わたしは自覚した。  それも、ちょうど眠る前に思い出していた、あの日の出来事を夢で見ている。  ……その日、侍医の診察が終わり、ベットでうとうとしていたわたしは、ふと目を覚ました。  自分の手は、11歳のわたしより少し小さい。  9歳くらいのときだろうか。  何気なく庭を見下ろすと、揺れるレースの隙間から、見慣れない小さな人影が静かに佇んでいるのが見えた。  それは頭までローブを被った男の子だった。  年齢はわたしより2つ3つくらい上だろうか?  フードのすきまから、整った鼻筋と少し日に焼けた肌が見えた。すると、 「……君は妖精? それとも天使?」  急に謎かけのような質問を投げかけられて、 「えっ?」  わたしはびっくりして目をパチパチさせた。 「それとも噂のとおり、本当に幽霊なのか……?」
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

144人が本棚に入れています
本棚に追加