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きっとお父さまが入れてくれないわーーと口にする前に、男の子は辺りを見回し、庭木伝いにするりと2階のバルコニーまで辿りいてしまった。
窓辺に立つと彼のローブがはためいて、その下に王国の騎士見習いの制服を身につけていた。
質素ながら清潔で動きやすい格好だ。
「すごいわ……! 身軽なのね」
「なんてことないよ」
「とてもわたしにはできないもの。やっぱりすごい」
わたしは思わずはしゃいでいた。
彼がお茶目に舞台役者のようにお辞儀して見せたので、思わず熱心にパチパチと拍手する。
彼の身のこなしは、まるでお気に入りの本に登場する主人公のようだった。
猫みたいなしなやかで俊敏な動き。
少年は褒められたのが恥ずかしかったようで、照れた頬は赤く染まり、はにかんだ口元からは白い歯が見えた。
ローブの影になっていたけれど、黒っぽい瞳が微笑むのがわかった。
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