第五話 記憶~夕暮れ~

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「それより君は怖くないの?」 「……なにが?」 「こんな訪問者が現れて怖くない?」 「あぁ……。我が家の衛兵は優秀だから、庭に入れたならきっとお客さまでしょう? 悪い人ではないんじゃないかしら。だから怖くはないわ。驚いたけれど」 「見た目と違って豪胆だね」  我が家の庭に入れたのだから、おそらく彼は来客として招かれたのだろう。  そうではなく、わたしに害をなすつもりなら、いまさら慌てても非力な娘など一捻りだ。  彼が死神だとしたら、ずいぶん生き生きしてイタズラ好きな死神もいたものだと思う。  いずれにしても、怖くはなかった。 「2階の窓から訪問するほどじゃないわ」 「それはご無礼を。申し訳なかった」 「ううん……。感動した。あんな身のこなしができるなんて!」  ふふっ、と彼は笑った。
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