第五話 記憶~夕暮れ~

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 さっきあんなに大胆な行動をとったのに、まるで叱られた子猫のような表情をした彼を、わたしは笑って許してしまった。 「ふふふっ。うん。今は秘密でも許してあげる」 「ありがとう」 「それじゃあ……名無しの騎士見習いさま。2階にたどり着いた記念に、どうぞお確かめになって?」  わたしがそっと細い腕を持ち上げると、彼は静かにベットまで近寄ってきて、宝物に触れる様にうやうやしく手を握った。 「本当だ、ちゃんと生きてる。あったかい」  なんだかくすぐったい思いが湧き上がって、クスクス笑ってしまった。思い切って冗談まじりに尋ねる。 「ねぇ、わたしってそんなに死にそうな見た目かしら?」 「どういうこと?」 「だって妖精か幽霊なのかって訊いたでしょう」 「あぁ。それは違う」 「?」  繋いだ彼の手は温かかった。剣だこが少し硬いけれど、綺麗に爪を切り揃えた柔らかい手をしていた。 「窓から君が見えた時、不思議なくらい綺麗だった。銀の髪がキラキラしていて。ーーだから、妖精とか天使とか、やっぱり生きてる人間じゃない存在かもしれないと思ったんだ」  真正面からそんなことを言われてどきりとした。
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