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さっきあんなに大胆な行動をとったのに、まるで叱られた子猫のような表情をした彼を、わたしは笑って許してしまった。
「ふふふっ。うん。今は秘密でも許してあげる」
「ありがとう」
「それじゃあ……名無しの騎士見習いさま。2階にたどり着いた記念に、どうぞお確かめになって?」
わたしがそっと細い腕を持ち上げると、彼は静かにベットまで近寄ってきて、宝物に触れる様にうやうやしく手を握った。
「本当だ、ちゃんと生きてる。あったかい」
なんだかくすぐったい思いが湧き上がって、クスクス笑ってしまった。思い切って冗談まじりに尋ねる。
「ねぇ、わたしってそんなに死にそうな見た目かしら?」
「どういうこと?」
「だって妖精か幽霊なのかって訊いたでしょう」
「あぁ。それは違う」
「?」
繋いだ彼の手は温かかった。剣だこが少し硬いけれど、綺麗に爪を切り揃えた柔らかい手をしていた。
「窓から君が見えた時、不思議なくらい綺麗だった。銀の髪がキラキラしていて。ーーだから、妖精とか天使とか、やっぱり生きてる人間じゃない存在かもしれないと思ったんだ」
真正面からそんなことを言われてどきりとした。
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